100年後の夏を生き残る方法
おい………！
おい……！大丈夫か…！
聞こえてるか……！
おい！しっかりしろ！
立てるか？
よし。
大丈夫かい？しばらく意識を失っていたようだが…
そうか。よし。
いま何月何日かわかるかい？自分の名前は？
うん。うん。やっぱり。間違いないな。
よし。君は俺が責任を持って面倒を見る。
今日は一旦俺と行動を共にしてくれ。
なに？家に帰りたいだって？
君の帰る家なんてここには……いや、”いま”にはないよ。
なにせ ”いま” は………
2123年の8月だからね。
はっはっは！ザリガニがハトムギ化粧水食らったみたいな顔してるぞ！
……………
いや、すまない。こっちの話だ。
む、どうやら信じていない様子だね。
だが君は既に違和感を感じているはずだよ。
そう。8月真っ盛りだってのに暑さを全く感じないだろう？
空をご覧よ。
はっはっは！ザリガニがハトムギ浸透乳液食らったみてえな顔だな！
………………
いや、すまない。こっちの話だ。
どうやら信じてもらえたようだね？
とにかく、俺は君を元いた時代に送り届ける義務があるんだ。
何が何でもついてきてもらうよ。
とはいえ、諸々の手続きまでに少々時間がかかるからね。
とりあえずは待ち時間だ。その間、こっちの世界を案内するよ。
どうした？腹でも減ったのかい？
あ、そうだ！
ｺﾞｿｺﾞｿ
ファミチキ、食う？
んだよ、その顔！お腹すいてんじゃないかよ！
ﾓｯ
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100年経ってるとはいえ君らの住む街とそんなに変わらないだろ？
詳しくは教えてあげられないけど…
ちょうど君が元いた時代の頃にいろいろあったみたいでさ。
まあ大災害ってやつ？
それでほとんどの文明が崩壊寸前だったんだけど数十年かけてようやく復元できたってワケ。
ちょっと前まではとにかく食糧難が酷くてね。
なんとか生きていけるようにはなったけど、
依然厳しい状況は続いているよ。
街の飲食店は昔のものがそのまま残ってるだけのただのハリボテさ。
君らの時代じゃこの、きちの屋？って店でコオロギ丼をいつでもたらふく食えたって聞いたぜ？？
うらやましいな〜〜〜〜〜〜俺たちゃコオロギなんて正月にしか食えねえよ〜〜〜〜〜
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暑いな…この辺は人が立ち入らないから、霧ヶ峰の空調も届かないんだ。
もう少し歩いたら涼しくなるから我慢してくれな。
むっ……！
危ない…。下がって！
ザリガニだ…！！
ぺう
ひ～～～～危ない危ない！
8月と言えばザリガニだからね！対策用にハトムギ化粧水を持っておいてよかったよ
そうだ！8月だし土手に行ってみよう！
確か今日はちょうど土手でお祭りがある日だからね！
きっと楽しいよ！
おっ？どうやら未来のお祭りがどんなモンなのか気になるってぇクチだね？
この江戸っ子め！
そうと決まればさっそく土手へ向かおうか！
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おっ！やっとるやっとる！
さあ！これが！
未来の！
お祭りだよ！
おいおいおい、どうしたってんだよ
まーたシケたツラに逆戻りかい？
お前の分も買ってきてやるから！そこで待ってろよ！
おまたせ～～～～～～
ほら。食いな。
ンだよ！食べないのかよ！
後でお腹空いても知らないからな！
ﾓｯﾓｯ
なに、君んとこのお祭りはもっといろいろあったって？
ﾓｯﾓｯﾓｯ
まあいろいろ法律とかも変わったからな〜〜〜規制とか厳しくってさ
今はお祭りといったらこれよ！
さーてお祭りも堪能したことだし、川でネッシーでも見ようか！
やっぱ8月といえばネッシーでしょ！ね？？？？？
ちなみにこの川には絶対に入るなよ？宇宙の藻屑になるからな。絶対だぞ。
おっ！来たぞお待ちかね！
おーーーーい！ネッシーやーーーーい！
さてさて！そろそろ時間だし、ここから離れようか！
うわっ！
いやーまいったまいった。8月の川はこれさえなければ最高なのになあ。
ザリガニの大群だ。
下がって！離れてな！
ﾁﾞｪｴｴｲ！！！
さあもう時間だ！
君を元の時代に返す場所が決まったぞ！
さっそく向かおうじゃないか！
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着いたぞ！
ここから元の時代に戻れるように俺が区に申請出しておいたから！
さあ 乗ってくれ
大丈夫大丈夫。 合ってるから。
来たぞ。この紫のが時限転移装置だ。
じゃ、気を付けてな。
あのさ！帰ったらやりたいことたくさんやるんだぞ！
あと実家とかちゃんと帰れよ！
じゃあの！！！！！悔いなく生きろよ！！！！！
時はさかのぼり2023年8月。
夏の異常な暑さにより街のあちこちに時空の歪みが発生。
行方不明者、もとい時空遭難者が相次ぐ。
さらに上昇し続ける気温により地球は蒸発。
母なる大地の消えゆく中、唯一東京都大田区だけが生きさらばえ、
スペースコロニー・ネオ大田区が新たに人類のゆりかごとなった。
地球の公転・自転の概念が失われた事により四季は消滅。
季節は夏のみになり、耐えかねたネオ大田区民は超巨大冷却装置を空に浮かべた。
また、食料危機は困難を極め、
ネオ大田区政府は万能食料”水送式免炊食 通称：そうめん” を開発。
”そうめん”を各世帯に供給するため街中に竹製の”とい”が張り巡らされた。
区の境目である多摩川には時折、宇宙からの来訪者が顔を見せる。
（なお、川の向こうに見える川崎市の景色は全てホログラムである。）
人類は辛くも生き延びているが…
疲弊しきった人類が遥か外宇宙の刺客から
目をつけられているという事態に、
人類滅亡のカウントダウンは既に始まっているという事実に、
勘づいている者はまだ誰もいない。
あがががががががが
